
目立ちすぎるあの模様への素朴な疑問
アフリカのサバンナを舞台にした自然ドキュメンタリーを見ていると、いつも不思議に思うことがあります。それはシマウマの存在です。ライオンやヒョウといった肉食動物が目を光らせているあの過酷な環境で、なぜ彼らはあんなに派手な白黒模様を身にまとっているのでしょうか。
周囲の景色は、乾いた土の色や枯れ草の黄金色がメインです。その中で真っ白と真っ黒のコントラストは、どう考えても目立ちすぎている気がしてなりません。かくれんぼをするときに、わざわざ工事現場の反射ベストを着て隠れるような違和感があります。
生存に有利どころか、むしろ見つけてくださいと言わんばかりのデザインに見えてしまうのは、私だけではないはずです。進化の過程で生き残ってきたからには、何かしら強力なメリットがあるはずですが、その理由があまりにも直感に反しているようで、昔からずっと喉に刺さった小骨のように気になっていました。だって見てみてくださいこの写真を。

教科書に載っていそうな正解を振り返る
一般的にシマウマの縞模様について語られるとき、よく耳にする説がいくつかあります。まず代表的なのが、カムフラージュ説です。遠くから見ると縞模様が周囲の景色に溶け込んだり、あるいは何頭も集まることで個体の境界線が曖昧になり、肉食動物が標的を絞りにくくなったりするという話です。いわゆる幻惑効果というもので、敵を混乱させるためのデザインだという説明は、なんとなく納得感があります。

また、シマウマの天敵であるライオンなどの視覚が人間とは異なっている点も指摘されます。彼らの目には縞模様が独特のノイズのように映り、距離感を狂わせる効果があるのではないかという考え方です。群れで一斉に逃げ出すとき、あの模様がチカチカと動くことで、一頭の背中を追い続けるのが難しくなる。そんなハイテクなステルス機能が、あのかわいらしいシマウマに備わっているのだと言われれば、なるほど自然界の神秘だなと感心してしまいます。
現実はそんなに甘くないのでは?という疑念
しかし、本当にその理屈だけで、あんなにハッキリした模様が必要なのでしょうか。ライオンは視覚だけで狩りをするわけでは当然ありません。優れた嗅覚や聴覚も持っています。さらに言えば、シマウマはもともと体が大きく、群れで行動しているため、模様がどうであれ存在自体は隠しようがありません。
実際に研究者の中にも、このカムフラージュ説に疑問を投げかける人がいるようです。例えば、ライオンがシマウマを捕らえる瞬間の分析を行うと、縞模様が狩りの成功率に劇的な影響を与えているという明確な証拠は見つかりにくいという話も耳にします。そもそも、本当に目立たないことが目的なら、他の草食動物のように地味な茶色や灰色を選んだほうが、よほど合理的ではないでしょうか。わざわざ白黒という極端な色を選んだ背景には、もっと別の、私たちが想像もつかないような切実な理由が隠されているような気がしてくるのです。

虫や温度という意外な視点に気づく
最近の研究や議論を眺めていると、視覚的な隠れみのとは全く別の、物理的な構造に注目した説が有力視されていることを知りました。その筆頭が、吸血虫を避けるためという説です。サバンナにはアブやツェツェバエといった、病気を媒介する恐ろしい虫がたくさんいます。驚くべきことに、これらの虫は縞模様のある表面を避ける傾向があるという実験結果があるそうです。
虫たちの目には、あの白黒のパターンが非常に不快な光の反射に見えるらしく、着陸しようとしても上手く着地できないとする説があります。もしこれが本当なら、シマウマはファッションとしてあの模様を選んだのではなく、究極の虫除けウェアとしてあの柄を身につけていることになります。命に関わる感染症を防ぐためなら、多少肉食動物に見つかりやすくなったとしても、お釣りが来るほどのメリットがあるのかもしれません。
さらに、体温調節のためという説も興味深いです。黒い部分は熱を吸収しやすく、白い部分は反射しやすいわけです。この温度差によって皮膚の表面に微細な空気の渦ができ、天然の扇風機のような役割を果たしているのではないか?という考え方です。厳しい暑さの中で体温を一定に保つための工夫だとしたら、あの模様はデザインというより、非常に高度なエンジニアリングの結晶に見えてきます。
結局のところ何が本当なのかを考える
こうして色々な説を並べてみると、結局どれか一つが正解というわけではなく、いくつもの要因が複雑に絡み合ってド派手なしま模様になっているのではないかと思えてきますね。ある時は虫を防ぎ、ある時は熱を逃がし、またある時は仲間同士で見分けるための記号として機能する。自然界の進化は、私たちが考えるほど単純な一問一答ではなく、複数の課題を同時に解決しようとした結果、あの不思議な模様にたどり着いたのかもしれません。
もちろん、今の科学で言われていることが数十年後にはまた別の説に取って代わられている可能性もあります。それでも、あんなに目立つ姿で堂々と生きているシマウマを見ていると、人間の常識で有利か不利かを決めつけるのは、少し傲慢なことなのかもしれないと感じます。彼らにとっては、あの白黒の世界こそが最も合理的で、最も美しい正解なのでしょう。
今のところ、私は、シマウマの縞模様は生存のための多機能なサバイバルスーツであるという見方に、一番ワクワクしています。次に動物園で彼らを見かけたら、その高度な機能美に敬意を払って観察してみようと思います。


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