
~自分の体なのに、自分が一番わかっていないという不思議
なぜ自分一人だと三日坊主で終わるんだろう
筋トレやダイエットを始めたものの、気づけばいつの間にかジムの会員証が財布の肥やしになっている…そんな経験が、誰にでも一度はあるのではないでしょうか。私もその一人で、これまで何度も習慣化したいことを見つけては挫折、見つけては挫折、自分を奮い立たせては、数週間後には自分への言い訳を考える天才になっていました。
そもそも、なぜ私たちは自分の体のことなのに、自分一人ではうまく管理できないのでしょうか。健康になりたい、筋肉をつけたいという願いは本物のはずなのに、いざ重いダンベルを目の前にすると、心の中のもう一人の自分が、今日はこれくらいでいいんじゃない、と甘いささやきを投げかけてきます。この、自分という存在のコントロールの難しさは、一体どこから来るものなのかがずっと不思議でした。
「意志の力が足りない」という根性論の限界
世間一般では、トレーニングが続かないのは意志が弱いからだとか、モチベーションの維持が足りないからだと言われることが多い気がします。いわゆる根性論ですね。もっとストイックになれ、自分を追い込め、といった強い言葉がSNSや雑誌に溢れています。う~ん、個人的にはこういうのキライです。
確かに、鋼の意志を持った超人のような人は世の中に存在します。でも、私たち普通の生活者が、仕事や家事で疲れ果てた後に、さらに自分を厳しく律するというのは、構造的にかなり無理があるのではないかと思うようになりました。意志の力という、目に見えないガソリンのようなものに頼りすぎるから、ガス欠を起こして止まってしまいます。そう考えると、続かないのは性格の問題ではなく、やり方の問題であるような気がしてきたのです。
AIをコーチにして気づいた自分の節穴具合
そこで私は、半年ほど前からAI(Gemini3)をフィットネスコーチに見立てて、
①毎回のトレーニング内容を報告し、
②アドバイスをもらって
③メモアプリに記録する
という実験を始めました。今日やった種目、重さ、回数、あとはちょっと感想とかをただ無機質に打ち込み、それに対して良いところと悪いところ、それぞれフィードバックをもらう。たったそれだけのことですが、これが驚くほど効果的でした。
半年続けてみて一番に感じたのは、自分の感覚がいかにアテにならないかという残酷な事実です。自分では、今日はかなり追い込んだ、もう限界だ、と思っていたのに、AIにデータを投げると、前回の記録と比較して、今日は少し強度が落ちていますね、と冷静に指摘されます。逆に、今日は調子が悪いなと感じていても、数値で見るとしっかり成長していることがわかったりします。やってみると本当にびっくりします。
自分の体感という主観的なフィルターを通すと、どうしても今の楽な方に事実をねじ曲げて解釈してしまいがちです。しかし、AIという、こちらの感情やその日の気分の浮き沈みに一切左右されない客観的な視点を通すことで、初めて自分の本当の姿が鏡に映し出されたような感覚になりました。
なぜ「客観的な視点」が劇的に効くのか
なぜ、たかがAIに数字を報告するだけで、これほどまでに姿勢が変わるのでしょうか。いくつか理由があるように思えます。
一つは、確証バイアスからの脱却です。人間は、自分にとって都合の良い情報ばかりを集めてしまう癖があります。今日は疲れているから軽くても仕方ない、という自分への言い訳を正当化する理由を無意識に探してしまうのです。しかし、数字という共通言語でAIとやり取りをすると、その言い訳が通用しなくなります。
二つ目は、意思決定のコストが下がる点です。今日は何を何回やろうか、と自分で考えるのは意外と脳のエネルギーを使います。疲れている時は、その考える作業自体が苦痛で、結果としてトレーニングを避けてしまう。そこを、これまでのデータから次はこの重さに挑戦しましょう、とAIに提示してもらうだけで、自分は動くだけでいいという状態になれます。これがトレーニングに対する心理的なハードルを大きく引き下げてくれます。
そして三つ目は、AIが絶対に私を放棄しないという安心感です。人間のトレーナーだと、サボった時に気まずさを感じたり、変に見栄を張ってしまったりすることもあるでしょうが、相手がプログラムならその心配はありません。ありのままのダメな自分をさらけ出しても、AIはただ淡々と、次はこうしましょう、と未来の話をしてくれます。伴走を投げ出すことも絶対にありません。この、感情の入らないドライな関係性が、かえって継続の支えになったのかもしれません。
「一つの付き合い方」として
半年間の実験を経て、フィットネスに限らず、私たちが何かを成し遂げようとする時、最大の壁になるのは自分の外側にある困難ではなく、自分の内側にある主観的なゆがみなのだということがわかりました。
AIは、私たちを魔法のように変えてくれる存在ではありません。ただ、私たちが目を背けがちな現実を正確に突きつけてくれる、曇りのない鏡のような存在です。その鏡をどう使うかは私たち次第ですが、自分一人で暗闇を走るよりは、ずっと心強いパートナーになり得ます。
もちろん、これが唯一の正解だとは思いません。AIに管理されるのが窮屈に感じる人もいるでしょうし、もっと情緒的なつながりを求める人もいるはずです。ただ、もしあなたが、自分の意志の弱さに絶望しかけているのなら、一度、自分を客観視するための外付けの脳を借りてみるのも悪くない選択肢かもしれません。


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