まかり通る節税の技法~フェラーリはこんなふうに使われている

街を歩いていると、たまに目が覚めるような真っ赤なフェラーリがディーラーのガラス窓の向こうに停まっていたりします。そんな時、つい余計なお世話とは知りつつも、この車を買うような人はいったいどんな仕事をしていて、どうやってこの維持費を払っているのだろうと考えてしまうことがあります。私のような身からすると、数千万円もする車は一生縁のない別世界の産物です。でも、巷ではよく、あの手の高級車は節税のために買われているんだよという噂を耳にします。果たして、趣味全開に見えるあのスポーツカーが本当に経費として認められるのか、そしてなぜフェラーリがよく選ばれるのかという点について、素人なりに少し深掘りして考えてみました。

贅沢品なのか仕事道具なのか

世間一般の感覚からすれば、フェラーリで取引先に向かうのは少し派手すぎます。荷物も載らないし、そもそも二人しか乗れない車が仕事に役立つのかという疑問が湧くのは当然です。普通の感覚なら、「仕事で使う車」といえば白やシルバーのワゴン車や、せめて落ち着いたセダンを想像します。そのため、多くの人は、あんなのは個人の趣味を会社に押し付けているだけではないか、不公平だ、と感じることもあるでしょう。

一方で、経営者の方々の言い分としては、これは会社のブランディングであるとか、あるいは福利厚生の一環だという理屈があるようです。確かに、クリエイティブな業界や派手さが求められる職種であれば、乗っている車がその人の成功を象徴し、信頼感を生むという側面もゼロではないのかもしれません。でも、その理屈がどこまで税務署に通用するのかというところが、私たち一般人にとっては非常に不思議なポイントです。

4年落ちの中古車が魔法の杖になる仕組み

調べてみると、そこには日本の税制が生んだ不思議な計算式が隠れていました。車のような高価な買い物は、買った年に全額を経費にできるわけではなく、何年かに分けて少しずつ費用として計上していく「減価償却」というルールがあります。新車の場合、普通車は6年かけて費用にしていきます。しかし、中古車になるとこの期間がぐっと短くなるのです。

特に興味深いのが、4年落ちの中古車という存在です。法定耐用年数が過ぎた中古資産の計算ルールを当てはめると、4年経過した中古車はなんと2年で償却できてしまいます。さらに、定率法という計算方法を使うと、購入した初年度にかなりの割合を費用として計上できるケースがあるようです。

メカニズムはこうです。例えば、利益がたっぷり出そうな年に3000万円の中古フェラーリを法人で購入したとします。すると、その年の利益から多額の購入費用を差し引くことができ、結果として法人税を抑えることができる。これが、よく言われる節税の正体の一つのようです。お金を税金として払うくらいなら、形に残る資産に変えてしまおうという発想ですね。

なぜ他の車ではなくフェラーリが選ばれるのか

ここでまた一つ疑問が浮かびます。節税が目的なら、中古の国産高級ミニバンや、頑丈なSUVでもいいはずです。なぜあえて、維持費も高く故障も多そうなフェラーリが選ばれるのでしょうか。そこには、資産価値が落ちにくいという、フェラーリならではの特殊な事情があるようです。

一般的な車は、新車で買った瞬間に価値が大きく下がり、10年も経てば二束三文になることが珍しくありません。しかし、フェラーリなどの一部の高級スポーツカーは、世界中にコレクターがいるため、数年持っていても価格がほとんど落ちない、あるいは逆に上がってしまうことすらあります。

つまり、会社としては、利益を車の購入費用という形で一度外に出し、税金を減らす。そして数年後にその車を売却すれば、買った時とあまり変わらない金額が手元に戻ってくる可能性があるということです。これは単なる浪費ではなく、現金を一時的に車の形に変えて保管しておく、一種の貯金箱のような役割を果たしているのかもしれません。もちろん、売った時には利益が出るので、そこでまた税金の計算が必要になるのですが、利益が出る時期をコントロールできるというのは、経営上の大きなメリットになるようです。

構造的な理由と社会のバランス

このような仕組みがまかり通っている背景には、日本の税制が個別の事情を一つ一つ精査するのではなく、ある程度機械的なルールで運用されているという構造的な理由がある気がします。税務署も、そのフェラーリが100パーセント仕事に使われていないと証明するのは難しいですし、経営者が「これは必要な投資だ」と言い張れば、完全に否定するのもそれなりに骨が折れる作業です。

また、こうした高級車が流通することで、中古車市場が活性化したり、整備や保険といった関連産業に多額のお金が落ちたりするという側面もあります。お金持ちが溜め込まずに、たとえ節税目的であっても派手にお金を使うことは、経済全体で見ればプラスの影響があるという見方もできるのかもしれません。

ただ、私たち一般の生活者からすると、汗水垂らして働いて納めている税金と、高級車を乗り回して税金を減らしている人たちの姿を並べて見ると、なんとも言えないモヤモヤした感情が残るのも事実です。これはルールの正しさと、感情的な納得感のズレが生んでいる現象なのでしょう。

結局のところ一つの選択肢にすぎない

いろいろと考えてみましたが、フェラーリを節税に使うという手法は、誰にでも推奨できる魔法のような裏技というわけではなさそうです。維持費は膨大ですし、常に値落ちしないモデルを見極める目利きも必要です。何より、税務調査で否認されるリスクと常に隣り合わせというスリルも付いてきます。

私たちが見かけるあの赤い車は、単なる見栄の象徴ではなく、ある種の経営判断の結果であり、計算されたリスクの塊なのかもしれません。もちろん、単に車が大好きでたまらないという純粋な情熱で乗っている人も多いでしょう。

結局、この世の中には自分たちの知らないルールの使い方がたくさんあって、それぞれが自分の立場で最適だと思う道を選んでいるだけなのかもしれません。

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