意見が違っても怖くない相手、意見が同じなのに怖い相手

違いを受け入れてもらえる心地よさ

仲の良い友人と話していて、ふと意見が真っ向から対立してしまったとき、みなさんはどう感じるでしょうか。「ああ、まずいことを言っちゃったかな…」と冷や汗をかいたり「なんとか説得しなきゃ」と肩に力が入ったり。あるいは「もうこの人とは分かり合えないのかな」と急に心のシャッターを下ろしたくなることもあるかもしれません。

けれど、世の中には不思議な関係性もあります。どれだけ議論が白熱しても、あるいは価値観が正反対だと分かっても、ちっとも怖くない。むしろ、そんな風に考えるのも面白いよねと話し合えるような、あの独特の安心感です。

なぜ私たちは、ある人とは意見の相違で関係が壊れるのを恐れ、別の人とは違ったままで笑っていられるのでしょうか。この違いは一体どこから来るのか、考えてみたいと思います。


「一致こそが正義」という空気感

一般に、仲が良いというのは、価値観が似ているとか、共通の趣味があるといった一致点が多い状態を指すことが多いようです。類は友を呼ぶという言葉があるように、似た者同士が集まるのは自然なことですし、自分と同じ意見の人に囲まれているのは、自分の正しさが証明されているようでとても居心地が良いものです。

そのため、多くのコミュニケーション術や人間関係のコツを説く本では、いかに相手に共感するか、あるいは衝突を避けるためにどう言葉を選ぶかといった、調和を保つための技術が重視されています。意見が食い違ったときは、どちらかが譲るか、あるいは折衷案を探すのが大人の振る舞いである。そんな風に教わってきた気がします。つまり、「違い」は解消すべき課題であり、一致こそが良好な関係のゴールであるという考え方が、私たちの根底には強く流れているのではないでしょうか。


同質であることの危うさ

しかし、ここで少し視点を変えてみると、共感や一致ばかりを追い求める関係には、危うい側面もあるように感じられます。もし、相手と常に同じでなければならないという暗黙のルールがあるとしたら、それは裏を返せば、違う意見を持つことは裏切りであるというメッセージになりかねません。

例えば、相手の顔色を伺って自分の本音を飲み込み続けたり、相手も自分と同じように感じているはずだと思い込んで期待しすぎたり。そうした状態は、一見すると平和ですが、実は綱渡りのような緊張感を孕んでいます。

相手と自分の境目があやふやになり、二人がひとつの塊のようになってしまう。そんな同質性の罠にはまると、小さなズレが関係を根底から揺るがす致命傷になってしまうことがあります。本当の安心感というのは、実は一致していることではなく、違っていても大丈夫だという確信の中にこそあるのではないか。そんな気がしてくるのです。


構造的に考えてみる

なぜ境界線を守ることがこれほどまでに難しいのか、その構造的な理由についても考えてみたいところです。ひとつには、私たちの多くが、自分の意見を自分自身そのものと同一視してしまいがちだからかもしれません。自分の考えを否定されると、まるで自分という人間が全否定されたかのような痛みを感じてしまう。だから、必死に守ろうとするし、相手にも自分と同じになってほしいと願ってしまう。

また、社会全体が効率やスピードを重視する中で、丁寧に対話をして違いを楽しむ余裕が失われていることも一因かもしれません。白か黒か、敵か味方かという二極化された議論の中では、境界線は防壁へと変わり、相手を攻撃するための道具になってしまいます。

さらに、現代のSNSのような環境も影響しているでしょう。そこでは、自分と同じ意見ばかりが強調され、異論は排除の対象になりやすい構造があります。こうした環境に慣れてしまうと、日常の対面での関わりにおいても、違いを受け入れる土壌が少しずつ衰えていってしまうのかもしれません。


今のところの私の答え

結局のところ、意見が食い違っても安心して関われる人というのは、自分自身のことを自分で支えられている人なのだろうな、と今の私は考えています。自分の中にしっかりとした軸があり、相手に自分を埋めてもらおうとしない。だからこそ、相手が自分と違う場所に立っていても、それを脅威と感じずに眺めていられる。

それは、寂しいことではなく、むしろとても豊かなことです。踏み越えてはいけない境界線があるからこそ、私たちは孤独な個体として出会い、相互にやり取りをして、良い影響を与え合うことができます。

誰かと話していて、それはちょっと自分の考えとは違うなあと思ったときは、相手をコントロールしようとせず、かといって自分を殺しもせず、ただ、そうなんだ!と受け止める、あるいは新規性のあるものとして面白がる、そういった行動の積み重ねによって、強固に守られた境界線があるからこそ親密さが育っていくのかもしれません。

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