どのようにしてXは「口論相手のマッチングアプリ」になっていったのか?

独り言が主役だった初期の記憶

思い返せば、初期のごく短い期間、ツイッターランドはもっとずっと静かな場所でした。今日食べたラーメンが美味しかったとか、会社に行きたくないとか、あるいは道端で見つけた変な形の石のこととか。誰に届かなくても構わないような、とりとめもない独り言がただ漂っているだけの空間だったように記憶しています。

当時はまだ、自分のタイムラインに流れてくるのは、自分がフォローした人の言葉だけでした。それはまるで、自分の好きな本だけを並べた本棚を眺めているような、あるいは気の合う友人たちと放課後の教室でだらだらと喋っているような、そんな地続きの安心感があった気がします。知らない誰かの怒号が突然耳元で響くようなことは、まだ稀な出来事でした。


拡散という魔法と呪いのボタン

最初の大きな変化は、他人の投稿を自分のフォロワーに共有できる機能が定着したことだったのではないでしょうか。それまでは自分の庭の中で完結していた言葉が、壁を越えて外の世界へと飛び出していく翼を得たのです。

これは当初、素晴らしい発明に思えました。面白いジョークや有益な知識、あるいは助けを必要としている人の声を、あっという間に世界中に広めることができるようになったからです。しかし、この魔法の「リツイート」ボタンは、同時にある副作用も運んできました。

それは、「文脈の切り離し」です。あるコミュニティの中では冗談として通じていた言葉が、全く別の価値観を持つ人々の元へ届けられたとき、それはしばしば無礼な発言や攻撃的な主張として受け取られてしまいます。悪意のない一言が、知らない誰かの逆鱗に触れ、そこから火の手が上がる。これが炎上の始まりではなかったでしょうか。そんな光景が少しずつ増えていったのが、この頃だったように思います。


アルゴリズムがお節介を焼き始めた頃

さらに決定的な変化をもたらしたのは、タイムラインの並び順が変わったことではないでしょうか。かつてはただ時間が過ぎる順番に並んでいた投稿が、いつしかシステムが選んだおすすめ順に並ぶようになりました。

運営側からすれば、ユーザーが興味を持ちそうなものを優先的に見せることで、より長く滞在してもらいたいという親切心だったのかもしれません。しかし、ここで一つの大きすぎる誤算が生じます。

なんと人間が最も強く興味を惹かれ、反射的に反応してしまうのは、自分と似た意見ではなく、自分を不快にさせる意見や、到底受け入れられないような極論だったのです。

システムは学習します。このユーザーはこの手の話題に激しく反応する、ならばもっと見せてあげよう。こうして、私たちは無意識のうちに、自分にとって最も腹の立つ相手と最も効率的にマッチングされる仕組みの中に組み込まれていきました。これが、今のギスギスした空気感を生んでいる構造的な要因の一つではないかと、私は疑っています。


インプレッションという新しい通貨の誕生

そして最近になって、さらに大きな地殻変動が起きました。投稿がどれだけ見られたかという数字が、直接的な金銭報酬に結びつく仕組みが導入されたことです。これにより、ネット上の振る舞いはもはや個人の感情の発露だけではなく、一種のビジネスとしての側面を持つようになりました。

注目を集めるためなら、あえて火に油を注ぐような発言をする。わざと誰かが怒りそうなことを言って、反論を呼び込み、表示回数を稼ぐ。そういった、いわば「炎上を燃料にするような」動きが加速してしまったように見えます。

かつては感情の行き違いで起きていた喧嘩が、今では戦略的に仕掛けられた興行のようになっている。そこにはもはや対話の余地はなく、ただ数字を奪い合うための冷徹な計算が働いているのかもしれません。そうなると、私たちが必死に正論で返そうとすればするほど、相手の思うツボというなんとも皮肉な状況が生まれてしまいます。


それでも、指先を止めてみる

結局のところ、今の私たちは、怒りが富を生む巨大な装置の中に放り込まれているような状態なのかもしれません。かつての のどかな日記帳に戻ることは、もう難しいでしょう。

ですが、時系列でこの変化を辿ってみると、今起きている争いの多くが、実は私たちの内側から湧き出たものというよりは、外側の仕組みによって呼び起こされたものだということに気づけます。そう気づくだけでも、少しだけ心が軽くなるような気がします。

誰かの投稿にカッとなって、反論の言葉を打ち込みたくなったとき。これは本当に私が言いたいことだろうか、それとも誰かの掌の上で踊らされているだけだろうか。そんな風に自問自答して、スマートフォンを置きます。これを小さな抵抗として今日もタイムラインを閉じることにします。

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