
そもそもコーラって何味なんだろう
暑い夏の午後や、脂っこいハンバーガーを頬張るとき、どうしても欲しくなるあの黒い液体。ありますよね、シュワシュワとした炭酸と、喉を焼くような独特の刺激。私たちは当たり前のようにコーラと呼び、それを口にしていますが、ふと不思議な気持ちになりました。
これは一体なんの味なのでしょうか。
リンゴジュースならリンゴの味がしますし、オレンジジュースならオレンジの香りがします。でも、コーラを飲んで、あ、これはあの植物の味だね、と即座に言い当てられる人はまずいない気がします。
茶色くて甘くて、なんだかよくわからないけれど、とにかくコーラの味がする。そんな風に、名前そのものが味の定義になってしまっている飲み物って、実はかなり珍しい存在ではないでしょうか。
そもそも、何からできているのかさえ、私たちはあまり詳しく知りません。謎のベールに包まれたこの液体について、今日は一人の生活者として、のんびり考えてみたいと思います。
世間で言われているコーラの正体
一般的に、コーラの歴史を紐解くと、それは19世紀のアメリカに辿り着くと言われています。もともとは薬剤師さんが作った薬用酒のようなものが原型だった、という話は有名ですよね。元気を出すための滋養強壮剤として、あるいは頭痛を和らげるためのシロップとして誕生したというエピソードは、今の嗜好品としての姿からは少し想像しにくいかもしれません。
名前の由来についても、よく耳にする説があります。アフリカ産のコーラナッツという植物の種子と、コカの葉を使っていたからコーラになった、というお話です。確かに、それなら名前の通りです。
原材料のラベルを裏返して見てみると、そこには糖類、炭酸、カラメル色素、酸味料、香料といった言葉が並んでいます。どうやらあの特徴的な黒い色は、カラメル、つまりお砂糖を焦がした色であることも広く知られている事実です。ここまでは、調べればすぐに出てくる、いわばコーラの公式プロフィールのようはものです。
じゃあ葉っぱやナッツの味なのか?
でも、ここで少し立ち止まって考えてみたくなります。本当にコーラナッツの味があの味なのでしょうか。現代のコーラの多くには、実はコーラナッツそのものはほとんど使われていないという噂も耳にします。もしそうなら、私たちが信じているコーラらしさの正体は、別の場所にあることになります。
それに、あの独特の香りを思い出してみてください。単に甘いだけではなく、どこかスパイシーで、鼻に抜ける爽やかな感じがあります。これをすべて香料という一言で片付けてしまうのは、少し違和感があります。
もし仮に、目の前にコーラという名前を知らない人がいたとして、その人にこの味を説明するとしたら、どう伝えるのが正解なのでしょうか。薬っぽい味、と言えば少しネガティブに聞こえるかもしれませんし、スパイスの効いた砂糖水、と言うのも何かが足りない気がします。説明しようとすればするほど、あの液体が持つ実体から遠ざかっていくような、不思議な感覚に陥ります。
秘密というスパイス
コーラの味を構成しているのは、実は物理的な原材料だけではないのかもしれない、と私は思い始めています。
たとえば、世界的に有名な「あのメーカー」のレシピは、特定の数人しか知らない極秘事項だという都市伝説があります。銀行の巨大な金庫に保管されているとか、レシピを知っている二人は同じ飛行機に乗らないとか、そんな映画のようなエピソードが、コーラの味をより深めているのではないでしょうか。
あの味の核となる香料の配合は、「セブン・エックス」と呼ばれているそうです。この、何だかかっこいいコードネームのような響き。私たちは、ただの飲み物を飲んでいるのではなく、ある種の秘密やミステリーといった「情報」を一緒に飲み込んでいるのかもしれません。
さらに構造的な理由を考えると、コーラは複数の香りの組み合わせでできているという説が有力です。シナモン、バニラ、レモン、オレンジ、コリアンダー、ナツメグ。これらが絶妙なバランスで混ざり合ったとき、個々のスパイスの個性を超えた、コーラという新しい概念が誕生する。
バラバラなら馴染みのある香りが、集まると正体不明の何かになる。この、足し算ではなく掛け算のような変化が、私たちの舌を煙に巻いている正体なのかもしれません。
私たちは飲み物ではなく「物語」を飲んでいる
結局のところ、コーラとは何なのか。今の私なりの答えは、それは特定の果実や植物の代弁者ではなく、人間の創造力が作り上げた、実体のない味、というものです。
自然界にそのまま転がっている味ではなく、誰かが一生懸命に調合し、秘密として守り抜き、世界中に広めていった文化そのものがコーラの正体なのかな、なんて考えたりします。だからこそ、どの果実にも似ていないのに、どこか懐かしくて、定期的に飲みたくなる中毒性があるのかもしれません。
次にコーラを飲むときは、原材料の欄に書かれていない、たくさんの歴史や秘密、そして調合師たちの工夫を想像しながら、ゆっくりと喉を鳴らしてみたいと思います。いつもの刺激が少しだけ違って感じられるはずです。


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