石油の副産物が生活を支えていた?プラスチックの原料「ナフサ」とは何者なのか

テクノロジー

生活のなかで感じる違和感

最近、いつも使っているゴミ袋を買いにホームセンターへ行ったら、なぜか特定のサイズだけ売り切れていたり、棚が少し寂しくなっていたりすることはありませんか。

私の友人も、お風呂の設備を取り替えようとしたら、メーカーの都合で新規の注文が一時的にストップしていると言われて頭を抱えていました。お風呂の工事が始まらないなんて、まさに冷や水を浴びせられたような気分ですよね。

こうした日々のちょっとした困りごとの裏側で、最近ニュースなどでよく耳にするのが「ナフサ」の供給不足という言葉です。

ガソリンスタンドで見かけるガソリンや、冬場にお世話になる灯油ならよく知っていますが、「ナフサ」と言われても、それが何なのか、私たちの生活にどう関係しているのか、いまひとつピンとこないのが正直なところではないでしょうか。


噂とニュースのギャップ

テレビやネットのニュースを眺めていると、中東の情勢が緊迫していて、海を渡ってくる船のルートが大変なことになっているという解説がよく流れています。それを聞くと、なるほど、だから原油が足りなくなって色々なものが値上がりしているのかな、と思ってしまいます。

しかしその一方で、政府の発表や関係者の会見などを注意深く見ていると、国全体としては数ヶ月分の備蓄がしっかりと確保されているので、直ちにすべての供給が止まるような心配はありません、という説明もなされています。ここで少し、不思議に思えてこないでしょうか。

国全体としては十分に足りているはずなのに、なぜ現場の職人さんや街の小さなお店では、材料が入ってこないとか、仕入れ値が跳ね上がって商売が続けられないといった悲鳴が上がっているのでしょう。

大元の倉庫にはあるはずなのに、なぜ私たちの手元には届かないのか。このニュースの安心感と、現場の切迫感のあいだにあるギャップには、どのような理由が隠されているのでしょうか。


ナフサの正体と意外な事実

そこで、専門家ではないなりに少しデータを調べてみると、私たちが普段どれほどこの「ナフサ」という見えない存在に依存しているのか、次々と疑問が湧いてくると同時に、驚くような事実が見えてきました。

まず、日本国内では一体どれくらいのナフサが毎日使われているのでしょうか。調べてみると、平時において毎日およそ10万キロリットルという、想像もつかないほど大量のナフサが消費されているそうです。

では、そのナフサはどこから来ているのでしょうか。なんと、そのうちの約40%以上を、まさにいま情勢が緊迫している中東からの輸入に頼っているという構造があります。

さらに、私たちの生活にはどれくらい具体的な影響が出ているのでしょうか。たとえば、建物の塗装や自動車の修理に欠かせないシンナーなどの溶剤ですが、この価格がここ数ヶ月で最大で7割から8割近くも暴騰しているというケースがあるそうです。これまで数千円で買えていた缶が、1万円を大きく超えるような事態も起きているのだとか。

それでは、現場の企業はどうなっているのでしょうか。これに耐えかねて、今年の初めからのわずか数ヶ月の間で、全国の塗装に関わる会社の倒産件数が、過去の歴史的な不況の時期に匹敵する水準まで急増しているという悲しいデータも公表されています。

普段は意識することすらない言葉の裏で、これほど激しい地殻変動が起きているのですね。


どうやって作るのか・何に使うのかという構造

そもそも、このナフサというものは一体どうやって作られ、何に使われているのでしょうか。

ものすごくざっくりと言えば、地球から掘り出した原油を製油所で熱して蒸留する過程で、ガソリンや灯油、軽油などと一緒に分かれて出てくる、いわば粗製のガソリンのような液体です。では、これがどうやって身の回りの製品に変わるのでしょうか。

これを「ナフサクラッカー」と呼ばれる、化学工場の心臓部のような巨大な設備で高温で分解することによって、エチレンプロピレンブタジエンといった基礎的な化学品が生まれます。

ここからがマジックの本番で、これらの基礎的な化学品が姿を変えて、プラスチックや合成ゴム、繊維、そして様々な溶剤になっていきます。私たちのまわりには、どれくらいナフサ由来のものがあるのでしょうか。

毎日の買い物で使うレジ袋ペットボトル、食品を包むラップスマートフォンのケース自動車のタイヤバンパー、さらには病院で使われる点滴のチューブ人工透析の医療器具にいたるまで、身の回りのプラスチック製品のほとんどすべてが、このナフサを出発点にしているのです。

それでは、今回の不足がなぜこれほど複雑で、私たちの元に届かないのでしょうか。これには、単に日本全体の量がゼロになったわけではなく、流通の目詰まりが起きているのではないかという指摘があります。

国の備蓄や大手企業が確保した代替ルートによって、主要なパイプラインにはモノがあっても、調達力の弱い中小企業や、地方の末端の小売店にまで行き届く細い水路のところで、供給の波が途切れてしまっているという可能性です。

みんなが不安になって多めに在庫を抱えようとすることも、この目詰まりをさらに悪化させているのかもしれません。


見えないつながり

こうして考えていくと、ナフサの供給不足というニュースは、決して石油業界だけの遠いお話ではなく、私たちのゴミ出しのルールや、お風呂のリフォームの進み具合にまで地続きでつながっていることが分かります。

この先、この問題がいつどのように解決するのか、あるいはさらに深刻化していくのかについては、誰にも断言できません。

中東のルートが回復すれば数ヶ月で落ち着くという楽観的な見方もあれば、これをきっかけにプラスチックのあり方そのものや、リサイクルの構造を根本から見直さなければならないという長期的な課題を指摘する声もあります。

今回、私たちにできることは非常に限られていますが、次に街でプラスチック製品を手に取ったり、お風呂のシャワーを浴びたりするときに、この裏側にある地球規模の長い旅路に少しだけ思いを馳せてみるのもよいかもしれません。

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