新常識。運動しない人にもおすすめしたい「クレアチン」の嬉しい効果

見覚えのない名前

サプリメントの棚を眺めていると、ときどき場違いな気分になることがあります。特に、プロテインの大きなボトルの横にひっそりと、あるいは力強いパッケージで鎮座している「クレアチン」という白い粉末。あれを目にするたびに、自分には一生縁のないものだと思い込んでいました。

だって、あれはベンチプレスを何百キロも持ち上げるような、ストイックに筋肉を追い込む人たちだけが飲むあやしい粉ではないのか?そんな風に、勝手なイメージを膨らませていたのです。

ところが最近、どうやらその認識は少し古いのかもしれないという話を耳にしました。運動を全くしない、あるいは週末に少し散歩をする程度の私のような人間にとっても、実はクレアチンは心強い味方になってくれる可能性があるというのです。これは一体どういうことなのか。ただの筋肉増強剤ではない、その意外な一面について、少し掘り下げて考えてみました。


マッチョ専用という思い込みを疑ってみる

世間一般でクレアチンといえば、やはりスポーツサプリメントの王道です。瞬発的な力を出しやすくする、筋肉の中に水分を溜め込んで体を大きく見せる、といった効果がよく知られています。部活動に励む学生やボディビルダーが愛用しているイメージが強すぎて、私たちが日常で飲むのは少しハードルが高い気がしてしまいますよね。

そもそも、普通に生活しているだけであれば、食事から摂る栄養だけで十分ではないかという意見も根強いものです。肉や魚にも含まれている成分なのだから、わざわざ粉末で補う必要なんてない。そう考えるのが、一般的な日本の生活者としての感覚ではないでしょうか。私も、サプリメントにお金をかけるくらいなら、ちょっといい赤身のステーキでも食べたほうが健康的で楽しいのではないかと、ずっと思っていました。


数字とデータが教えてくれる意外な側面

ところが、調べてみると興味深い事実がいくつか浮かび上がってきました。クレアチンは、私たちの体内でも合成されているアミノ酸の一種なのですが、その役割は筋肉を動かすことだけにとどまらないようなのです。

まず驚いたのは、脳の健康に関する研究結果です。私たちの脳は、体全体の重さのわずか数パーセントしかないにもかかわらず、消費するエネルギーの量は全体の約20パーセントにものぼると言われています。この膨大なエネルギーを維持するために、クレアチンが一役買っているというデータが増えているのです。

たとえば、睡眠不足の状態で行われた計算テストの結果において、クレアチンを摂取していたグループの方が、そうでないグループよりも疲労感が少なく、高いパフォーマンスを維持できたという報告があります。また、加齢に伴う記憶力の低下や、気分の落ち込みに対しても、ポジティブな影響を与える可能性を示唆する研究も少なくありません。

つまり、クレアチンは筋肉を動かすためのガソリンであると同時に、脳という精密なコンピューターを動かすための予備バッテリーのような役割も果たしているのかもしれない。そう考えると、デスクワークで頭を使いすぎてヘトヘトになっている現代人にこそ、必要な成分だという見方もできてきます。


私たちの脳もエネルギーを欲しがっている

なぜ、運動をしない人にも効果が期待できるのか。その構造的な理由を考えてみると、私たちの体内でエネルギーが作られる仕組み、いわゆるATP(アデノシン三リン酸)の再合成に行き当たります。

私たちが何かを考えたり、指先を動かしたりするとき、細胞の中ではATPというエネルギーの通貨が消費されます。消費されたATPは、またすぐにリサイクルして作り直す必要があるのですが、クレアチンはそのリサイクルを高速化させる手助けをしてくれます。

激しいスクワットをしているときだけでなく、難しい会議で頭をフル回転させているときも、細胞の中では同じようにエネルギーの通貨が激しくやり取りされているわけです。

また、最近注目されているのが、高齢者の健康維持における役割です。筋肉が衰えていくサルコペニアの予防だけでなく、脳のエネルギー代謝をスムーズにすることで、認知的な機能をサポートするヒントになるのではないかと考えられています。これは単なる筋肉の話を超えて、私たちが健やかに老いていくための話なのかもしれません。

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このような「可能性」がある、という距離感

もちろん、これを飲めば誰でもすぐに天才になれるとか、疲れ知らずになれるといった極端な話ではありません。サプリメントはあくまで補助的なものですし、体質によって合う合わないもあるでしょう。腎臓に持病がある方などは注意が必要だという医学的な見解もあります。

今回、クレアチンについて調べていく中で、エリック・ローソン氏らによる学術的なレビューなどを参考にしましたが、そこには単なる運動能力の向上だけでなく、生活の質全体を底上げする可能性が淡々と、しかし確かに記されていました。一見すると自分とは無関係だと思っていたものが、実は日々の何気ない倦怠感や、夕方の集中力切れを救ってくれるかもしれない。そう思うと、あの白い粉が少しだけ身近な存在に感じられてきます。

結局のところ、クレアチンを試すべきかどうかは、その人のライフスタイル次第です。でも、もしあなたが「運動はしていないけれど、なんだか毎日頭が重い、夕方になると思考がまとまらない…」といった悩みを抱えているなら、筋肉のためではなく、自分の脳や毎日の活力を維持するための一つの選択肢として考えてみる価値はあるのかもしれません。

世の中にはまだ、私たちがマッチョのものと決めつけて見逃している、素晴らしい知恵が隠れているのかもしれません。

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