なぜ「付録」のほうが本誌よりデカくて豪華なのか?「付録が本体」と化した雑誌ビジネスの裏側

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書店やコンビニの雑誌コーナーを通りかかったとき、分厚い箱が挟み込まれた雑誌を目にしたことはないでしょうか。ブランドのトートバッグ、高機能な美容家電、キャラクターの豪華なポーチなど、「これ、付録じゃなくて普通に買ったら数千円するのでは?」と思えるような豪華なアイテムがメインのように鎮座しています。

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画像:東海テレビ・ユースク「進化続ける雑誌の付録…そこで気になった『図書館に置いてある雑誌の付録』の行方 調査したら結果が意外」

パラパラと本誌を開いてみると、誌面は数千円相当の付録に比べて薄く、「どちらが本体なのか分からない」という状態になっていることも珍しくありません。
「こんなに豪華な付録をつけたら赤字になるのではないか?」「なぜ雑誌そのものではなく、付録で勝負しているのだろう?」と不思議に思うはずです。一見すると本末転倒に見えるこのビジネスモデルの裏には、出版業界が生き残りをかけて編み出した緻密な経済メカニズムが隠されていました。
なぜ今、「付録の豪華さ」を前面に出した雑誌ビジネスが定着しているのでしょうか。

背景にあるのは、スマートフォンやSNSの普及に伴う「出版不況」と「紙の雑誌の販売部数低下」です。単に情報を伝えるだけであれば、ウェブサイトやSNSで即座に無料で手に入る時代になりました。
これに対し、出版各社は「紙の誌面情報」だけでは買ってもらえないという危機感から、物理的なモノとしての魅力(付録)をセットにすることで、消費者が「今すぐ店頭で買いたい」と思える動機(体験価値)を創出する必要に迫られたのです。

ビジネスモデルの観点から「付録が本体化」する仕組みを考えてみると、主に3つの合理的な理由が浮かび上がります。
1つ目は、「バンドリング(抱き合わせ)戦略と大量生産によるスケールメリット」です。
単体で販売すると2,000円〜3,000円してしまうようなバッグやコスメも、出版社が数十万部規模で一括発注(大量生産)することによって、1個あたりの製造原価を劇的に抑えることができます。さらに、アパレルブランドなどとコラボレーションする場合、ブランド側にとっても「自社商品を知ってもらうための宣伝費(プロモーション費)」として割り切れるため、通常ではあり得ない安価でライセンスや商品を提供できるのです。

2つ目は、「広告収入の維持と流通ネットワークの確保」です。
出版ビジネスの本質は、単に本を売った利益(本体価格)だけで成り立っているわけではありません。雑誌の販売部数が維持されれば、本誌に掲載する企業からの「広告枠の販売収入」を確保できます。さらに、日本の出版流通システム(取次と書店・コンビニ)において、一定の販売ボリュームを保つことは、全国の店頭スペース(棚)を維持するために不可欠です。豪華な付録によって部数を維持することが、雑誌ビジネス全体のプラットフォームを守る防波堤になっています。

3つ目は、「アンカリング効果」と「お得感の演出」です。
「1,500円の雑誌」と聞くと「高い」と感じる消費者も、「3,000円相当のブランドバッグが付いて1,500円」と提示されると、脳は「1,500円も得をした」と判断します。商品そのものの価格よりも「どれだけ得をしたか」という心理的価値(消費者の知覚価値)を最大化させることで、購買のハードルを一気に下げているわけです。

このメカニズムを理解することは、現代の「モノ売りから体験・サービス売りへの変化」を読み解く上で非常に興味深い視点を与えてくれます。
情報がデジタル化して無料化(コモディティ化)していく時代において、物理的な「紙の書籍」というメディアが生き残るためには、単なる情報メディアから「限定グッズを手に入れるためのパッケージ」へと役割を再定義する必要があったと言えます。

一見すると本末転倒な「付録が本体」という現象は、時代の変化に合わせた高度なピボット(事業転換)の結果なのです。
今や雑誌の付録は、単なる「おまけ」を超えて、アパレルやメーカーが新製品を試してもらうための巨大なプロモーションの場としても機能しています。
「付録目当てで買う」という行動は、決して出版社に騙されているわけではなく、大量生産と広告モデルの恩恵を消費者が賢く受け取っている結果とも言えます。

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