ふわふわの食パンに滑らかな生クリーム、そして色鮮やかな旬の果物。日本でおなじみの「フルーツサンド」が今、ヨーロッパの食文化を揺るがすほどの人気を集めています。海外では日本のサンドイッチ全般が「SANDO(サンド)」と呼ばれて親しまれていますが、なかでもフルーツを使った甘いサンドイッチは「見栄えが良く、新感覚で美味しい」と現地の人々の心を掴んでいます。
しかし、ブームが広がる一方で、ある意外な理由から疑問視する声や激しい議論が巻き起こっています。それは、私たちが普段あまり意識しない「税金(付加価値税)」のルールです。
一体なぜ、美味しそうなフルーツサンドが税金の議論へと発展してしまっているのでしょうか。そこには、ヨーロッパ特有の消費税制度と、食品を区別する複雑な線引きが存在していました。
海外で話題となったきっかけのひとつが、イギリスの大手スーパーマーケットチェーンなどが日本風の「イチゴクリームサンド」を発売したことです。SNSを中心に話題となり爆発的な売り上げを記録しましたが、同時に税制上の取り扱いを巡って税務当局や専門家の間で議論が白熱することになりました。

https://www.bbc.com/japanese/articles/cj3rrz5lgvdo
ヨーロッパ諸国の多くには、日本の消費税にあたる「付加価値税(VAT)」が存在します。そして多くの国では、生活に必要な「日用品や基本的な食料品」には低い税率(あるいはゼロ%)を適用し、「贅沢品や嗜好品(お菓子など)」には高額な標準税率を課すという軽減税率の仕組みを取り入れています。
ここで問題となったのが、「フルーツサンドは主食(食事)なのか、それともデザート(お菓子)なのか」という点でした。
イギリスの税制を例に取ると、国民食とも言える一般的な「ハムやタマゴのサンドイッチ」は主食(生活必需品)とみなされ、付加価値税が「0%(非課税)」に設定されています。
一方で、ケーキやチョコレート、冷たいお菓子などの「菓子類(デザート)」は贅沢品と判定され、原則として標準税率である「20%」の税金が課されます。
もしフルーツサンドが「具材が果物になっただけのサンドイッチ」と認められれば税率は0%です。しかし、「生クリームと果物を挟んだ実質的なケーキ(お菓子)」と判断されれば20%の税金がかかることになります。
販売側やファンは「パンで挟んでいるのだから間違いなくサンドイッチだ」と主張しますが、税務上の公平性を求める声からは「甘くてお菓子と同じなのに、非課税なのはズルいのではないか?」という疑問が投げかけられているのです。
実はヨーロッパにおいて、こうした「お菓子か主食か」の判断を巡る裁判や議論は過去に何度も起きています。例えば「ジャム入りのクッキーはパンかお菓子か」「温かいテイクアウト食品は贅沢品か」といった境界線は非常にあいまいで、時代や文化の変化によってたびたび法律論争へと発展してきました。
このフルーツサンドを巡る騒動は、私たちが普段何気なく口にしている食べ物の文化が、他国へ輸出されたときに思わぬ摩擦を生む面白さを示しています。
日本においては、食パン文化と和菓子・洋菓子のアイデアが融合して生まれた「食感を楽しむ食事とスイーツの中間」のようなポジションとして長年親しまれてきました。しかし、主食とお菓子を税制上で厳密に区別している国へ進出したことで、社会的な線引きの壁に突き当たったと言えます。
消費者の視点から見れば、もし20%の課税が決定すれば販売価格が直接上がってしまうため、せっかくのブームに水が差されるかもしれないという懸念もあります。
異国の食文化が海を渡り、現地の生活に溶け込んでいく過程では、味の好みだけでなく法制度や価値観とのすり合わせが必要になります。
「フルーツサンドはサンドイッチか、それともお菓子か」というユニークな問いは、単なる税金の話にとどまらず、新しい文化を受け入れる社会の柔軟性を試しているのかもしれません。
今後、ヨーロッパの税務当局がどのような判断を下すのか、そして「SANDOブーム」がどのように変化していくのか、温かく見守っていきたいところですね。



