昆虫とロボットはなぜ似ているのか?機能を極限まで追求した先に待っていた驚きの共通点とは

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カブトムシの頑丈な甲殻や、ハエの素早い方向転換、アリの無駄のない歩行スタイル。日常で目にする小さな昆虫たちをじっくり観察したとき、どこか機械やロボットのような精密さを感じたことはないでしょうか。

実は近年、最新のロボット工学と生物学が出会うことで、「昆虫とロボットは根本的な仕組みが非常に似ている」という事実が次々と明らかになっています。

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どの虫も、生きていくのに最適な機能に特化した形をしています

単に見た目を真似して作っているから似ているのか、それとも別の理由があるのか。生物と機械が辿りついた「機能を極限まで追求した先」の共通点について、最新の研究成果を交えながら紐解いていきましょう。

なぜ今、昆虫とロボットの共通性に大きな注目が集まっているのでしょうか。その背景には、人間のような大型のロボットではなく、災害現場の隙間に入り込んだり、狭い場所を点検したりできる「超小型ロボット(マイクロロボット)」の開発競争が世界中で激化していることがあります。

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全地形対応の多脚ロボット。ちょっと虫っぽいです

小さなロボットを作ろうとしたとき、技術者たちは大きな壁にぶつかりました。ロボットを小さくすると、人間のような複雑な脳(高性能なCPU)や大きなバッテリーを積むことができなくなってしまうのです。

計算能力もエネルギーも極限まで制限された状態で、どうやって自律的に動き、障害物を避けるのか。その答えを求めて研究者たちが注目したのが、億年単位の進化の歴史を経て「最小の構造で最大のパフォーマンス」を獲得してきた昆虫たちの身体構造でした。

昆虫とロボットが似てくる最大の理由は、物理的な制約の中で性能を限界まで高めようとすると、自然と似たような設計に辿りつく「収斂進化(しゅうれんしんか)」のような現象が起きるためです。

例えば、ハーバード大学が開発したハチ型飛行ロボット「RoboBee」に関する研究(2013年に科学誌『Science』に掲載)では、重量わずか数ミリグラムのロボットを飛ばすために、昆虫の羽の駆動メカニズムが徹底的に解析されました。

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ハーバード大学が開発する昆虫サイズのロボット「RoboBee」-GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20171026-autonomous-flying-microrobots/

昆虫の脳は非常に小さく、高度な計算処理を行うことはできません。それにもかかわらず、空中での素早い回避行動ができるのは、脳で考えているのではなく「風を感じたら反射的に羽の角度が変わる」という身体の構造そのものに計算機能を肩代わりさせているからです。これはロボット工学で「身体性インテリジェンス(Embodied Intelligence)」と呼ばれ、複雑なセンサーやCPUを使わずに環境に適応するための究極の省エネ設計とされています。

また、東京大学などの研究チームでは、カイコガの脳神経と小型ロボットの車輪を直結させ、匂いを感知して走る「昆虫操縦型ロボット」の実験が行われました。この研究でも、昆虫の単純な神経回路とロボットのアルゴリズムには驚くほどの互換性があり、物理的に動くシステムとしての「構造の類似性」が実証されています。見た目は結構おぞましいですが、昆虫の脳を使ってロボットを動かす取り組み。

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バーチャル先端研公開 2020 東京大学先端科学技術研究センター
「昆虫脳操縦型ロボット ~サイボーグ昆虫による脳研究~」
https://virtualopenhouse.rcast.u-tokyo.ac.jp/2020/study/?p=brain-research-by-cyborg-insects

この「機能の追求」が生み出す類似性は、私たちにとってどのような意味を持つのでしょうか。

それは、生物のからだを「命の神秘」として見るだけでなく、洗練された「工学的なシステム」として捉え直せるようになることです。私たちが普段「気持ち悪い」「不快だ」と感じてしまいがちな虫たちの動きや形状は、実は無駄を極限まで削ぎ落とした最高峰のテクノロジーの結晶でもあります。

昆虫の構造を学ぶバイオミメティクス(生物模倣技術)が進むことで、将来的に、瓦礫の山を素早く捜索する救援ロボットや、体内の血管を移動して治療を行う医療用マイクロマシンなど、これまでの機械の常識を覆す革新的な技術が誕生すると期待されています。

自然界が生み出した「昆虫」と、人間が理詰めで作り上げた「ロボット」。まったく異なるプロセスで誕生した2つの存在が、同じ物理法則と「効率の追求」という目的に向かって進んだ結果、同じデザインに辿りついているというのは非常に興味深い現象です。

昆虫ロボットの研究はまだ発展途上であり、本物の虫が持つ自己修復能力や超省エネな代謝機能を完全に再現するには多くの課題が残されています。

それでも、次に公園や家の中で小さな虫を見かけたとき、「この体の中に、未来のロボットの設計図が詰まっているのかもしれない」と観察してみると、日常の風景が少し違って見えてくるかもしれません。

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